消化器科
特色
当地域では消化器疾患の精密検査や専門診療をできる医療機関は限られています。消化器科では内科・外科・救急診療科と協力して、消化器系の救急疾患(消化管出血・急性胆管炎・急性膵炎等)および消化器系のがん(食道がん・胃がん・大腸がん・肝がん・胆道がん・膵がん等)の診療をしています。また地域の基幹病院として、高難度の内視鏡検査・治療にも積極的に取り組んでいます。
内視鏡診療の紹介
上部消化管内視鏡検査/大腸内視鏡検査
上部消化管内視鏡検査は他院検査後の精査目的であることが多く、経口内視鏡を使用しています。大腸内視鏡検査は、10mm未満のポリープであれば、コールドスネアポリペクトミー(高周波を使用しないポリペクトミー:後出血リスクがほとんどありません)で、見つけ次第、切除しています。なるべく患者さんに苦痛の少ない検査を受けてもらえるように、丁寧な内視鏡操作を心掛けています。
①コールドスネアポリペクトミー

1:大腸に6mmのポリープを認めます。

2:スネアでポリープを絞扼して切除します(高周波の使用なし)。

3:ポリープ切除後の潰瘍です。
大腸内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic Mucosal Resection:EMR)
10mm以上の大腸ポリープを切除する方法です。以前は後出血および穿孔の偶発症に備えて1泊2日の入院で行っていました。しかし、新型コロナウイルス感染症による病床数の不足を考慮して、2022年3月からは消化器科では大腸EMRを日帰り手術で行っています。切除後の潰瘍底をクリップで縫縮することにより、偶発症の予防に努めています。2022年3月から9月までの約半年間で、日帰り手術の大腸EMRを88件行いました。偶発症は後出血の1例のみでした(抗凝固薬内服中の患者さんでした)。
②大腸EMR

1:大腸に12mmのポリープを認めます。

2:ポリープの根元に液体を注入して膨隆させます。

3:スネアでポリープを絞扼して切除します(高周波の使用あり)。

4:ポリープ切除後の潰瘍です。

5:潰瘍をクリップで縫縮しました。
内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)
日本で開発された内視鏡処置で、食道・胃・大腸の早期がんに用います。ESDの黎明期から川辺晃一先生(前消化器科部長)が導入し、消化器科の中心的な処置のひとつとなっています。集計可能期間(2012年11月から2024年12月まで)で上部消化管(食道・胃)ESDを868件、下部消化管(大腸)ESDを273件行いました。
③食道ESD

1:食道癌の周囲に電気で目印をつけます(マーキング)。

2:マーキングの周囲から切開・剥離します。

3:フックナイフJで粘膜下層を剥離しています。

4:食道癌切除後の潰瘍です。

5:切除後の食道癌の標本です。
④胃ESD

1:胃角部に胃癌を認めます。

2:胃癌の周囲に電気で目印をつけます(マーキング)。

3:IT2ナイフで粘膜下層を剥離しています。

4:胃癌切除後の潰瘍です。

5:切除後の胃癌の標本です。
⑤大腸ESD

1:大腸に扁平隆起性病変を認めます。

2:デュアルナイフJで粘膜下層を剥離しています。

3:大腸癌切除後の潰瘍です。

4:切除後の大腸癌の標本です。
内視鏡的止血術
上部消化管出血は、消化性潰瘍が多く、純エタノール局注療法を中心に、クリップ法や高張食塩水局注療法を併用して、止血術を行っています。ヘリコバクターピロリの除菌療法および制酸剤の普及により、消化性潰瘍の患者さんは以前より減少しています。食道静脈瘤に対しては、内視鏡的静脈瘤結紮術(Endoscopic Variceal Ligation:EVL)・内視鏡的硬化療法(Endoscopic Injection Sclerotherapy:EIS)・アルゴンプラズマ凝固(Argon Plasma Coagulation:APC)を行っています。胃静脈瘤に対しては、ヒストアクリルを用いたEISを行っています。下部消化管出血は、高齢化や抗血栓薬投与の増加に伴い、大腸憩室出血の患者さんが増加しています。大腸憩室出血に対して、以前は露出血管を伴う憩室を同定し、クリップ法で止血術を行っていました。しかし、クリップ法では再出血する患者さんが多く、年間1例ほど外科手術(結腸切除術)を要していました。2020年に内視鏡的大腸憩室結紮術(Endoscopic Band Ligation:EBL)を導入することにより、再出血する患者さんは少なくなりました。
⑥純エタノール局注

1:胃角部前壁に血管を伴う潰瘍を認めます。

2:血管壁に純エタノールを局注しています。

3:純エタノール局注後に血管は褐色に変化しました(止血成功)。
⑦クリップ止血術

1:十二指腸憩室の血管から出血を認めます。

2:止血クリップ3個を用いて、止血に成功しました。
⑧EIS

1:胃噴門部に静脈瘤を認めます。

2:局注針を静脈瘤に穿刺します。

3:静脈瘤内に硬化剤を注入します。

4:硬化剤注入後の静脈瘤です。
⑨EBL

1:造影CTで横行結腸からの出血を認めます。
2:横行結腸に周囲にびらんを伴う憩室を認めます。

3:EBL後に憩室内の血管を確認できました(止血成功)。
小腸内視鏡検査
2011年に小腸カプセル内視鏡およびダブルバルーン小腸内視鏡(ロングタイプ)を導入しました。小腸疾患の頻度はそれほど多くないですが、疾患を同定できた場合には臨床経過が劇的に改善する可能性があります。2024年12月までに363件の小腸カプセル内視鏡検査を行いました。空腸過誤腫、空腸進行癌、空腸GIST、回腸神経内分泌腫瘍、濾胞性リンパ腫、小腸静脈瘤、日本海裂頭条虫、アジア条虫、オルメサルタン関連スプルー様腸疾患等を認めました。希少疾患については、貴重な症例として学会発表および論文報告を行っています。
⑩日本海裂頭条虫

小腸カプセル内視鏡で日本海裂頭条虫の虫体を確認しました。
内視鏡的逆行性膵管胆管造影(Endoscopic Retrograde CholangioPancreatography:ERCP)
近年、高齢化に伴い、総胆管結石症・胆管癌・膵癌による、閉塞性黄疸・急性胆管炎の患者さんが増加しています。上記の疾患に対して、内視鏡的結石除去術や内視鏡的胆管ステント留置術を行っています。術後再建腸管(B-Ⅱ再建・R-Y再建)の患者さんは、十二指腸主乳頭まで内視鏡を挿入できないため、これまで内視鏡処置を行うことが困難でした。2021年にダブルバルーン小腸内視鏡(ショートタイプ)を導入したことにより、術後再建腸管の患者さんにも、内視鏡処置を行うことが可能になりました。
⑪ダブルバルーン内視鏡ERCP

1:十二指腸主乳頭をバルーンで拡張しています。

2:採石バスケットで総胆管結石を除去しています。

3:総胆管結石の除去に成功しました。

4:総胆管に結石を認めます(矢印)。

5:十二指腸主乳頭をバルーンで拡張しています(矢印)。

6:採石バスケットで総胆管結石を除去しています(矢印)。
超音波内視鏡検査(Endoscopic UltraSonograpy:EUS)
良沢昭銘教授(埼玉医科大学国際医療センター消化器内科)のご指導のもと、2017年にEUSを導入しました。内視鏡スコープ先端の超音波プローブにより、経胃および経十二指腸的に臓器の観察を行います。精査対象となる主な疾患は消化管粘膜下腫瘍や膵腫瘤です。症例によりEUSで観察をしながら、対象病変を穿刺して細胞診および組織診用の検体を採取する超音波内視鏡下穿刺吸引法(Endoscopic UltraSound-guided Fine Needle Aspiraton:EUS-FNA)を行います。2024年12月までに301件のEUSを行い、うち159件でEUS-FNAを行いました。その他EUS関連手技としてEUS-HGS 2件、EUS-CD 3件、EUS-PD 3件、EUS-PAD 1件、EUS-RV 1件を行いました。
⑫EUS-FNA

1:造影CTで膵頭部腫瘤を認めます。

2:MRCPで膵頭部腫瘤を認めます。

3:EUS-FNAで膵頭部腫瘤から組織を採取しています。

4:病理組織診断で膵神経内分泌腫瘍と診断しました。

5:外科手術で腫瘍を切除しました。
その他
内視鏡的異物除去、消化管狭窄に対する内視鏡的拡張術・ステント留置術等を行っています。
担当医の紹介
氏名 | 職名 | 専門医・認定医等 |
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葛西 豊高 | 副部長 | 日本内科学会認定 認定内科医 日本内科学会認定 総合内科専門医 日本内科学会認定 内科指導医 日本消化器病学会認定 消化器病専門医 日本消化器病学会認定 消化器病指導医 日本消化器病学会関東支部評議員 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡指導医 日本消化器内視鏡学会関東支部評議員 日本消化器内視鏡学会認定 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医 日本消化器内視鏡学会認定 大腸内視鏡スクリーニング認定医 日本消化器内視鏡学会埼玉部会 理事 日本消化管学会認定 胃腸科認定医 日本消化管学会認定 胃腸科専門医 日本消化管学会認定 胃腸科指導医 日本消化管学会認定 便通マネージメントドクター 日本カプセル内視鏡学会認定 カプセル内視鏡認定医 日本カプセル内視鏡学会認定 カプセル内視鏡指導医 日本肝臓学会認定 肝臓専門医 日本肝臓学会認定 肝臓指導医 日本胆道学会認定 胆道指導医 日本膵臓学会認定 膵臓指導医 日本ヘリコバクター学会認定 H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医 日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医 臨床研修指導医 医師少数区域経験認定医師 緩和ケア研修会修了 難病指定医 肝炎医療研修会受講 身体障害者福祉法第15条指定医(肝臓機能障害) がん医療に携わる医師に対するコミュニケーション技術研修会修了 嚥下機能評価研修会修了 Basic of Nutrition Therapy(BNT)セミナー修了 アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修修了 HotAXIOSシステム講習プログラム受講修了 医学博士 埼玉医科大学国際医療センター消化器内科[修練医] 杏林大学医学部臨床教育教員 |
佐藤 伸悟 | 副部長 | 日本内科学会認定 認定内科医 日本内科学会認定 総合内科専門医 日本消化器病学会認定 消化器病専門医 日本消化器病学会認定 消化器病指導医 日本消化器病学会関東支部評議員 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡指導医 日本消化器内視鏡学会関東支部評議員 日本肝臓学会認定 肝臓専門医 日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医 臨床研修指導医 アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修修了 緩和ケア研修会修了 |
江藤 宏幸 | 医師 | 日本内科学会認定 認定内科医 日本内科学会認定 総合内科専門医 日本消化器病学会認定 消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医 日本消化器内視鏡学会関東支部評議員 日本肝臓学会認定 肝臓専門医 日本消化管学会認定 胃腸科認定医 日本消化管学会認定 胃腸科専門医 日本ヘリコバクター学会認定 H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医 日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医 難病指定医 臨床研修指導医 緩和ケア研修会修了 肝炎医療研修会受講 アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修修了 医学博士 |
牛山 叡 | 医師 | 日本専門医機構認定 内科専門医 日本消化器病学会認定 消化器病専門医 日本肝臓学会認定 肝臓専門医 日本消化管学会認定 胃腸科認定医 日本消化管学会認定 胃腸科専門医 日本医師会認定 産業医 難病指定医 アルコール依存症の診断と治療に関するeラーニング研修修了 |
大山 湧平 | 医師 | 日本内科学会/日本専門医機構認定 内科専門医 日本消化器病学会認定 消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医 医学博士 |
川辺 晃一 | 非常勤医師 | 日本内科学会認定内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本消化器病学会消化器病専門医 日本消化器病学会指導医 日本肝臓学会肝臓専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡指導医 日本消化管学会胃腸科認定医 日本消化管学会胃腸科専門医 日本消化管学会胃腸科指導医 身体障害者福祉法第15条指定医(肝臓機能障害) 難病指定医 肝炎医療研修会受講 |
中原 守康 | 非常勤医師 (内視鏡担当) |
日本内科学会認定内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本消化器病学会認定消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 日本肝臓学会認定肝臓専門医 |
岡本 四季子 | 非常勤医師 (内視鏡担当) |
日本内科学会認定内科医 日本消化器病学会消化器病専門医 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 緩和ケア研修会修了 |
研修施設
- 日本内科学会認定医制度教育関連病院
- 日本消化器病学会認定施設
- 日本消化器内視鏡学会専門医制度指導施設
- 日本消化管学会胃腸科指導施設
- 日本肝臓学会関連施設
- 日本胆道学会指導施設
- 日本膵臓学会認定指導施設
学術活動(令和2年度〜令和6年度)
関連リンク
- 内科専攻医募集(基幹型:深谷赤十字病院内科専門研修プログラム)
- 専攻医募集のお知らせ
- 大腸憩室出血の重症化および再出血に影響する因子の検討 (PDF:81.26KB)
- 大腸腫瘍に対するcold snare polypectomy後に癌と診断された症例に対するサーベイランス方法についての探索的研究:多施設共同研究 (PDF:214.18KB)
- 消化器内視鏡に関連する疾患、治療手技データベース構築(多施設共同 前向き観察研究) (PDF:168.32KB)
-
「免疫チェックポイント阻害薬によるirAE胆管炎の実態調査」に関する研究のお知らせ
(PDF:372.63KB) - 早期胃がんの臨床研究に対するご協力のお願い (PDF:1186.24KB)
- 消化器科医師の1日 (PDF:466.07KB)
- 研修医の1日 (PDF:344.38KB)
- 診療現場レポート〜消化管がん〜 (PDF:395.46KB)